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地球環境問題と人類存続に関するアンケート 調査報告

本報告は、当財団が1992年より実施している「地球環境問題と人類の存続に関するアンケート」の2019年度の調査結果をまとめたものです。本年度もより多くの方々へ環境専門家の地球環境の現状認識をお伝えしたいと存じます。
今年の回答者数は、皆様のご協力の御陰で2,072件もの回答が寄せられました。(2018年は1,866件)世界のほとんどの地域をカバーする環境アンケート調査として、皆様へ今年も御報告が出来ることに改めてお礼を申し上げます。
今年は環境危機時計®の時刻が9時46分になりました。去年はアンケート開始以来、最も進んだ9時47分でした。今年の時刻は1分戻りましたが、危機意識の高さは同じ程度を維持したとも言えます。
一方、今年は「一般の人々の意識」、「政策・法制度」、社会基盤として「資金・人材・技術・設備」の三つの要素で、環境問題への取組みに改善の兆しは見られるかという設問を新たに設けました。
たくさんの回答を頂き、更に、回答者のほぼ半数の方から有意義なご意見やコメントを頂きました。
「アンケート自由記述検索」から閲覧できますので、環境有識者の生の声をぜひご参照ください。

われわれは、本環境アンケートを通じて環境有識者のみならず、より多くの方々に環境への関心を持って頂くことにより、地球環境問題の解決に微力ながら貢献することを切に願っています。
ご回答頂いた方々へ今一度心からの感謝とお礼を申し上げます。また皆様方からの貴重なご助言・ご指導を今後もたまわりますよう何卒宜しくお願い申し上げます。
2019 年9 月
公益財団法人 旭硝子財団

I. 調査の概要

調査時期2019 年4月から6月
調査対象 世界各国の政府・自治体、NGO/NPO 、大学・研究機関、企業、マス・メディア等で環境問題に携わる有識者
(旭硝子財団保有データベースに基づく)
送付数27,642(海外 26,450 + 国内1,192)
回収数2,072
回収率7.5%

I. 調査の概要

表1. 属性別の回収結果

※本報告書における分析の百分率のベースは、特に説明がない限り、単一回答の設問については回収票数、複数回答の設問については有効回答の延回答件数を使用している。

※数値は小数点第1位もしくは第2位を四捨五入してある。

※延回答件数ベース:回収票数ではなく、その質問に対してなされた回答の延件数を基数とする。

II. 調査結果の概要

1 .人類存続の危機に関する認識—環境危機時計®

  • 全世界の環境危機時計®の平均は9時46分となり昨年比で1分戻った。昨年は1992年の調査開始以来、最も危機意識の高い時刻となったが、今年もほぼ同じ結果であった。
  • 日本の環境危機時計® の平均は9 時39 分となり昨年に比べ8 分進んだ。
  • 世界全体の環境危機時刻を決定する際に最も多く選ばれた「地球環境の変化を示す項目」は、昨年と同じく「気候変動」が最多数を占め、次いで、「生物圏保全性(生物多様性)」、「社会、経済と環境、政策、施策」、「水資源」、「生物化学フロー(環境汚染)」、「人口」、「ライフスタイル」、「陸域系の変化(土地利用)」と続いた。
  • 同じく世界全体の「地球環境の変化を示す項目」を危機時刻順に並べると、「生物圏保全性(生物多様性)」が高く、続いて「人口」と「ライフスタイル」、「気候変動」、それから「社会、経済と環境、政策、施策」、「水資源」、「生物化学フロー(環境汚染)」の順となった。
  • 2016年から特に進んでいた「食糧」は9時39分となり、2018年から33分戻った。

2 .環境問題への取組みの改善の兆しに関する認識 -パリ協定、SDGsが採択された2015年以前との比較

  • 環境問題への取組みに対する改善の兆しとして、「一般の人々の意識」、「政策・法制度」、「社会基盤(資金・人材・技術・設備)」の三つの観点から、脱炭素社会への転換と「地球環境の変化を示す項目」別に質問をした。
  • 脱炭素社会への転換については、改善の兆しは少しあるが、「政策・法制度」や「社会基盤(資金・人材・技術・設備)」の面は「一般の人々の意識」ほどは進んでいないという結果となった。
  • 改善の兆しがある項目として、多く選ばれたのは、「気候変動」(25%)で、次に、「社会、経済と環境、政策、施策」(17%)、「ライフスタイル」(13%)となった。「全く改善の兆しはない」という回答は17%あった。
  • 両方の回答とも「一般の人々の意識」と「政策・法制度」の関係については、国、地域ごとに特徴的な差がみられた。

III. 調査結果

問1 人類存続の危機に関する認識- 環境危機時計®

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表2は“地球環境の変化を示す項目”です。地球全体の問題を念頭に置きながら、あなたがお住まいの国または地域における環境問題を考える上で重要な項目を3つ選んで1位~ 3位の順位付けをし、それぞれ時計の針に例えて0:10 ~ 12:00 の範囲で○○時○○分と答えてください。時刻は便宜上、10 分単位でご記入下さい。

※危機時刻の決定法について
 1位から3位の時刻の加重平均(1位:50%、2位:30%、3位:20%)として環境危機時刻を決定します。
 有効な回答が、1位と2位だけの場合は1位:62.5%、2位:37.5%。1位だけの場合は100%としています。

A-1 環境危機時刻

図1. 危機時刻の経年変化
  • 全世界の環境危機時計®の平均は9 時46 分となり昨年比で1 分戻った。
  • 日本の環境危機時計®の平均は9 時39 分となり昨年に比べ8 分進んだ。

A-2 回答者の年齢層による環境危機時刻の推移(2011年〜2019 年)

  • 60 代以上の回答者は高い環境危機時刻を回答する傾向がある。回答者の年齢が上がるにつれて、より高い環境危機時刻が回答される傾向にあったが、昨年は20代、30代の若い世代の危機意識がとても高くなった。今年は40 代、50代とほぼ同じ時刻となった。
  • 60 代以上の危機意識は2015 年からずっと上がり続けている。

A-2-1 世代毎の環境危機時刻の動き

  • 60代以上の環境危機時刻は、2016年までは全世代で最も高い9時28分〜9時36分の間でほぼ安定して推移していたが、2017 年から進み始め、今年は9 時57 分となった。
  • 40代、50代の環境危機時刻は、2012年から9時30分前後で安定していたが、今年は昨年よりも11分進んだ。
  • 20 代、30 代の環境危機時刻は、8 時34 分(2011 年)から2016 年まで上昇傾向にある。2016 年と2017年は、40代、50代の危機時刻とほぼ並んでいた。昨年は中国の20代30代の回答者の危機意識が高くなった影響を受け10 時00分となったが、今年は20 分戻った。
図4. 環境危機時刻の世代別推移

B. 地球環境の変化を示す項目

B-1  地球環境の変化を示す項目(第1 ~ 3 位選択)の分布(項目ごとの危機時刻と支持率)

グラフ1-1-1. 本年度(2019 年)全体
  • 世界全体の環境危機時刻を決定する際に選ばれた「地球環境の変化を示す項目」は、昨年に同じく「気候変動」(30%)が最多数を占め、次いで、「生物圏保全性(生物多様性)」(14%)、「社会、経済と環境、政策、施策」(11%)、「水資源」(10%)、「生物化学フロー(環境汚染)」(9%)、「人口」(8%)、「ライフスタイル」(7%)、「陸域系の変化(土地利用)」(7%)と続いた。
  • 同じく世界全体の「地球環境の変化を示す項目」を危機時刻順に並べると、「生物圏保全性(生物多様性)」(9 時58 分)、「人口」(9 時54 分)と「ライフスタイル」(9 時54 分)が世界平均よりも進んでおり、続いて、「気候変動」(9 時44 分)、「社会、経済と環境、政策、施策」(9 時41 分)と「水資源」(9時41分)と「生物化学フロー(環境汚染)」(9 時41 分)が並んだ。
  • 2018 年との比較では、「生物圏保全性(生物多様性)」、「陸域系の変化(土地利用)」、「ライフスタイル」の危機意識が高まり、「食糧」、「人口」、「気候変動」は下がった。(グラフ1-1-4)

B-2 危機時刻/支持率の分布の年次変化 ─ 2012 年度から2019 年度

グラフ1-1-4.

問2 環境問題への取り組みの改善の兆しに関する認識

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環境問題への取組みに改善の兆しは見られますか。パリ協定、SDGsが採択された2015年以前と比較して以下の3つの観点からお答えください。

 環境問題への取組みに対する改善の兆しとして、「一般の人々の意識」、「政策・法制度」、社会基盤「資金・人材・技術・設備」の三つの要素があると仮定し、脱炭素社会への転換と「地球環境の変化を示す項目」別に質問をした。
 回答の「全く進んでいない」を-2、「どちらかといえば進んでいない」を-1、「どちらともいえない」を0、「どちらかといえば進んでいる」を+1、「確実に進んでいる」を+2として数値化し平均値を算出した。
 地域・国ごとの平均値の算出にあたっては、30 以上の標本数を対象にした。

問2-1 脱炭素社会への転換は進んでいると思いますか?

 世界平均は下記の通りとなった。
  • 一般の人々の意識+0.52
  • 政策、法制度+0.27
  • 資金・人材・技術・設備+0.32

 全体として、脱炭素社会への転換については取組みに少し改善の兆しはあるが、「政策・法制度」や社会基盤「資金・人材・技術・設備」の面は「一般の人々の意識」ほどは進んでいないという結果となった。

 日本、オーストラリア、米国、カナダ、中東、西欧(UK以外)では、「政策・法制度」だけが負の値を示し、「進んでいない」という否定的な結果だった。

 対照的に、中国、台湾からの回答は「一般の人々の意識」よりもむしろ「政策・法制度」の方が「進んでいる」という結果となった。
 職種別には企業関係者からの回答も同様の傾向が見られる。

 特徴的な回答として、中米からの回答は「一般の人々の意識」だけが正の値で、日本からの回答はすべての要素で、「どちらともいえない」が多く、韓国からの回答はすべての要素において「進んでいない」という結果であった。
グラフ2-1-1.「脱炭素社会への転換の進み具合」の世界平均と地域、属性別平均

問2-2 取組みに改善の兆しが見られることを、表2の“地球環境の変化を示す項目”から1つ選んでお答えください。

改善の兆しがある項目として、多く選ばれたのは、「気候変動」(25%)で、次に、「社会、経済と環境、政策、施策」(17%)、「ライフスタイル」(13%)となった。「全く改善の兆しはない」という回答は17%あった。
 一番多く選ばれた「気候変動」について、全回答の平均値と、標本数が30以上の国・地域ごとの平均値をグラフ2-2-2に表す。  世界平均は下記の通りとなった。
  • 一般の人々の意識+1.22
  • 政策、法制度+0.65
  • 資金・人材・技術・設備+0.61

 「一般の人々の意識」は、世界平均は「どちらかといえば改善されている」を超える値となった。
相対的な比較ではあるが、特に高いのは、オセアニア、西欧、次いで北米だった。
最も低い平均値は日本からの回答であった。
 「政策・法制度」は、中国を中心にアジア全体で世界平均よりも高いが、オセアニア、北米では、「一般の人々の意識」が高いにもかかわらず、相対的に低い結果である。

 社会基盤である「資金・人材・技術・設備」は、中国、西欧が高めで、中南米が低い。

※ 他の項目については、国、地域ごとの標本数が少ないため、グラフ化は見送った。
グラフ2-2-1.選択された項目の割合

グラフ2-2-2.改善の兆し「気候変動」の世界平均と地域、属性別平均

所感

 最近の危機時刻の進み具合にも表れる通り、環境危機への意識は調査開始以来、最も高い状態となっている。
 その危機的な状況であっても、少しでも改善されているのか、あるいは益々悪化している状況なのかを、世界中の環境有識者を対象に意識調査を行った。 基準としては、国際的な合意の気候変動枠組条約(パリ協定)と国連 持続可能な開発目標(SDGs)が採択された2015年以前との比較とした。
 「政策、法制度」や社会基盤「資金・人材・技術・設備」は国や地域ごとに状況が異なっているので、全世界の平均値と地域・国ごとの平均値を合わせてグラフにまとめて、全体観と地域ごとの分布を表した。
 問2-1の脱炭素社会への転換の進み具合では、所謂先進国を中心に「一般の人々の意識」に対して「政策、法制度」は進んでいないという否定的な結果が多かったが、 中国、台湾からは、むしろ「政策、法制度」は「一般の人々の意識」よりも先んじているという結果になったことは興味深い。
 問2-2では取組みに改善の兆しが見られる項目は、「気候変動」、「社会、経済と環境、政策、施策」、「ライフスタイル」の順であった。 それに対して、問1の環境問題を考える上で重要な項目で最も選ばれたのも「気候変動」であり、状況の重要度、改善への取組みの関心度が共に高い。
 しかしながら、問1において2番目に選ばれ、危機時刻を進めている要因ともなっている「生物圏保全性(生物多様性)」は取組みに改善の兆しが見られる項目としては5番目という結果となり、改善の兆しは少なく、深刻さが増している事が危惧される。
 今後、しばらくの間、同じ質問を続けて、全世界の平均値と地域・国ごとのばらつきに注目して調査を続けていく所存である。
 答えにくい設問であったかもしれないが、フリーコメントと共に、とても丁寧に答えて頂いた回答者の方々のご協力に感謝いたします。
番号 項目 あなたがお住まいの国または地域で観察されること(例) プラネタリー・
バウンダリーズ(PB)
関連するSDGs(持続可能な開発目標)
1 気候変動 大気中CO2濃度や地球温暖化、海洋酸性度の増加
旱ばつ、大雨・洪水、暴風雨、大雪、異常低温・高温、河川・湖沼の干上がり、砂漠化などの悪化(増加、頻発化、巨大化)
気候変動、
海洋の酸性化、
大気煙霧質、
オゾン減少
2 生物圏保全性(生物多様性) 絶滅する生物種(見かけなくなった生物)の増加、(汚染、気候変動、土地利用等も関連) 遺伝子多様性、
機能性の多様性
3 陸域系の変化(土地利用) 特に熱帯、温帯、亜寒帯の生物圏の森林領域面積の変化
耕作域面積の変化
陸域系の変化
4 生物化学フロー(環境汚染) 過剰な窒素やリン分による富栄養化や化学物質やマイクロプラスチックスなどによる河川・海洋・土壌汚染の増加
浮遊物質や煤、化学物質による大気汚染の増加
化学物質による汚染、
窒素とリンの循環
5 水資源 枯渇や汚染による利用可能な淡水の減少
グリーンウォーター(土壌に含まれる植物が利用する水)の管理や質の低下
淡水
6 人口 地域や国全体の人口増加
国全体の人口増減とは無関係な都市人口の増加
ほぼ全てのPBの領域に関連
7 食糧 陸や海の食糧資源の減少 ほぼ全てのPBの領域に関連
8 ライフスタイル エネルギー・資源多消費型ライフスタイルからの転換 ほぼ全てのPBの領域に関連
9 社会、経済と環境、政策、施策 環境経済、環境会計を柱とするグリーンエコノミーの実現
環境問題に対する認識や環境教育の進展、法制度、社会基盤
貧困問題の解決、ガバナンス、女性の社会的地位
ほぼ全てのPBの領域に関連
プラネタリー・バウンダリーズ:Will Steffen, Katherine Richardson, Johan Rockstrom et.al. Science 13 Feb 2015 vol. 347, issue 6223

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2019年 地球環境の変化を示す項目(第1 ~ 3位選択)の分布(項目ごとの危機時刻と支持率)

2019年 環境問題への取り組みの改善の兆しに関する認識