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地球環境問題と人類存続に関するアンケート 調査報告

本報告は、当財団が1992年より実施している「地球環境問題と人類の存続に関するアンケート」の2018年度の調査結果をまとめたものです。本年度もより多くの方々へ環境専門家の地球環境の現状認識をお伝えしたいと存じます。
今年の回答者数は、皆様のご協力の御陰で1,866件もの回答が寄せられました。(2017年は2,152件)世界のほとんどの地域をカバーする環境アンケート調査として、皆様へ今年も御報告が出来ることに改めてお礼を申し上げます。
今年は環境危機時計®の時刻が9時47分になり、アンケート開始以来、最も危機意識が高くなりました。また、初めて20代、30代からの回答が他のどの年代よりも進みました。
特に、中国からの多くの回答結果の影響を受け、環境危機に対する意識の高まりと変化が感じられる結果になりました。
われわれは、本環境アンケートを通じて環境有識者のみならず、より多くの方々に環境への関心を持って頂くことにより、地球環境問題の解決に微力ながら貢献することを切に願っています。
ご回答頂いた方々へ今一度心からの感謝とお礼を申し上げます。また皆様方からの貴重なご助言・ご指導を今後もたまわりますよう何卒宜しくお願い申し上げます。
2018 年9 月
公益財団法人 旭硝子財団

I. 調査の概要

調査時期2018 年4月から6月
調査対象 世界各国の政府・自治体、NGO/NPO 、大学・研究機関、企業、マス・メディア等で環境問題に携わる有識者
(旭硝子財団保有データベースに基づく)
送付数24,472(海外 23,269 + 国内1,203)
回収数1,866
回収率7.6%

I. 調査の概要

表1. 属性別の回収結果

※本報告書における分析の百分率のベースは、特に説明がない限り、単一回答の設問については回収票数、複数回答の設問については有効回答の延回答件数を使用している。

※数値は小数点第1位もしくは第2位を四捨五入してある。

※延回答件数ベース:回収票数ではなく、その質問に対してなされた回答の延件数を基数とする。

II. 調査結果の概要

1 .人類存続の危機に関する認識—環境危機時計®

  • 日本の環境危機時計®の平均は9 時31 分となり昨年に比べ20 分進んだ。
  • 全世界の環境危機時計®の平均は9時47分となり昨年比で14分進んだ。これは、1992年の調査開始以来、最も環境危機意識の高い時刻となった。
  • 世界全体の環境危機時刻を決定する際に最も多く選ばれた「地球環境の変化を示す項目」は、昨年に同じく気候変動が最多数を占め、次いで、生物圏保全性(生物多様性)、水資源、社会、経済と環境、人口、生物化学フロー(環境汚染)、陸域系の変化(土地利用)、ライフスタイルと続いた。
  • 同じく世界全体の「地球環境の変化を示す項目」を危機時刻順に並べると、食糧、人口が特に高く、続いて生物圏保全性(生物多様性)、気候変動、生物化学フロー(環境汚染)、ライフスタイル、水資源、社会、経済と環境の順となった。
  • 2017年との比較では、食糧、生物化学フロー(環境汚染)、人口、ライフスタイルの時刻が特に進んだ。

2 .回答者年齢による環境危機時刻の推移

回答者の年齢層に注目し、2011 年から2018 年の間の世界の危機時刻の経時変化を分析した。

  • 2015 年までは、回答者の年齢が上がるにつれてより高い環境危機時刻が報告される傾向にあったが、今年は20 代、30 代の若い世代も環境危機意識が高い時刻となった。

III. 調査結果

問1-1 人類存続の危機に対する認識- 環境危機時計®

表2は“地球環境の変化を示す項目”です。地球全体の問題を念頭に置きながら、あなたがお住まいの国または地域における環境問題を考える上で重要な項目を3つ選んで1位~ 3位の順位付けをし、それぞれ時計の針に例えて0:10 ~ 12:00 の範囲で○○時○○分と答えてください。時刻は便宜上、10 分単位でご記入下さい。

※危機時刻の決定法について 1位から3 位の時刻の加重平均(1位:50% 、2 位:30% 、3 位:20%)として環境危機時計®の時刻を決定します。

A-1 環境危機時刻

図1. 危機時刻の経年変化
  • 日本の環境危機時計®の平均は9 時31 分となり昨年に比べ20 分進んだ。
  • 全世界の環境危機時計®の平均は9 時47 分となり昨年比で14 分進んだ。

A-2 回答者の年齢層による環境危機時刻の推移(2011年〜2018 年)

  • 2015 年までは、回答者の年齢が上がるにつれてより高い環境危機時刻が報告される傾向にあったが、今年は20 代、30 代の若い世代も環境危機意識が高い時刻となった。

A-2-1 世代毎の環境危機時刻の動き

  • 60 代以上の環境危機時刻は、2016 年までは全世代で最も高い9 時28 分〜 9 時36 分の間でほぼ安定して推移していたが、2017年から進み始め、今年は9 時49 分となった。
  • 40 代、50 代の環境危機時刻は、8 時56 分(2011年)から1年で9 時30 分まで進みその後ほぼ安定している。
  • 20 代、30 代の環境危機時刻は、8 時34分(2011年)から2016 年まで上昇傾向にある。2016 年からは、40 代、50 代の危機時刻とほぼ並んだが、今年は10 時00 分となり一気に28 分進んだ。特に、今年は中国の20 代の回答者の危機意識が高くなった影響を受けた。
図4. 環境危機時刻の世代別推移

B. 地球環境の変化を示す項目

B-1  地球環境の変化を示す項目(第1 ~ 3 位選択)の分布(項目ごとの危機時刻と支持率)

グラフ1-1. 本年度(2018 年)全体
  • 世界全体の環境危機時刻を決定する際に選ばれた「地球環境の変化を示す項目」は、昨年に同じく気候変動(28%)が最多数を占め、次いで、生物圏保全性(生物多様性)(12%)、水資源(11%)、社会、経済と環境(10%)、人口(9%)、生物化学フロー(環境汚染)(8%)、陸域系の変化(土地利用)(7%)、ライフスタイル(7%)と続いた。
  • 同じく世界全体の「地球環境の変化を示す項目」を危機時刻順に並べると、食糧(10時12分)、人口(10時02分)、生物圏保全性(生物多様性)(9時51分)、生物化学フロー(環境汚染)(9時49分)、気候変動(9時49分)が平均値よりも高く、続いて、ライフスタイル(9時47分)、水資源(9 時45 分)、社会、経済と環境(9 時35 分)の順となった。
  • 2016 年から食糧の危機時刻が特に進んでいる。(8 時59 分(2016 年)→ 9 時43 分(2017 年)→ 10時12 分(2018 年))。
番号 項目 あなたがお住まいの国または地域で観察されること(例) プラネタリー・
バウンダリーズ(PB)
関連するSDGs(持続可能な開発目標)
1 気候変動 大気中CO2濃度や地球温暖化、海洋酸性度の増加
旱ばつ、大雨・洪水、暴風雨、大雪、異常低温・高温、河川・湖沼の干上がり、砂漠化などの悪化(増加、頻発化、巨大化)
気候変動、
海洋の酸性化、
大気煙霧質、
オゾン減少
2 生物圏保全性(生物多様性) 絶滅する生物種(見かけなくなった生物)の増加、(汚染、気候変動、土地利用等も関連) 遺伝子多様性、
機能性の多様性
3 陸域系の変化(土地利用) 特に熱帯、温帯、亜寒帯の生物圏の森林領域面積の変化
耕作域面積の変化
陸域系の変化
4 生物化学フロー(環境汚染) 過剰な窒素やリン分による富栄養化や化学物質などによる河川・海洋・土壌汚染の増加
浮遊物質や煤、化学物質による大気汚染の増加
化学物質による汚染、
窒素とリンの循環
5 水資源 枯渇や汚染による利用可能な淡水の減少 淡水
6 人口 地域や国全体の人口増加
国全体の人口増減とは無関係な都市人口の増加
ほぼ全てのPBの領域に関連
7 食糧 陸や海の食糧資源の減少 ほぼ全てのPBの領域に関連
8 ライフスタイル エネルギー・資源多消費型ライフスタイルからの転換 ほぼ全てのPBの領域に関連
9 社会、経済と環境 環境経済、環境会計を柱とするグリーンエコノミーの実現
環境問題に対する認識や環境教育の進展
貧困問題の解決、ガバナンス、女性の社会的地位
ほぼ全てのPBの領域に関連
プラネタリー・バウンダリーズ:Will Steffen, Katherine Richardson, Johan Rockstrom et.al. Science 13 Feb 2015 vol. 347, issue 6223

2018年 アンケート自由記述ご意見

注)以下に掲載の記述回答文の内容は、回答者個人のご意見で有り、財団の見解を代表するものではありません。
また回答には氏名(敬称略)、国名、事務局番号を明記して、匿名希望者は匿名として表記しております。
表中のご意見は、一部抜粋となっているものもあります。

2018年 SDGsに関するご意見

注)以下に掲載の記述回答文の内容は、回答者個人のご意見で有り、財団の見解を代表するものではありません。
また回答には氏名(敬称略)、国名、事務局番号を明記して、匿名希望者は匿名として表記しております。
表中のご意見は、一部抜粋となっているものもあります。

2018年 地球環境の変化を示す項目(第1 ~ 3位選択)の分布(項目ごとの危機時刻と支持率)

2018年 環境問題への取り組みの改善の兆しに関する認識