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地球環境問題と人類存続に関するアンケート 調査報告

本報告書は、当財団が1992年より実施している「地球環境問題と人類の存続に関するアンケート」の2022年の調査結果をまとめたものです。本年度も、より多くの方々へ環境問題の有識者による地球環境に関する現状認識をお伝えしたいと存じます。

2022年の環境アンケートの回答期間の4月、5月は、昨年に引き続き新型コロナウィルス感染症( COVID-19)が世界的に流行している状態でした。さらに、2月24日にはロシアによるウクライナ侵攻が始まり、世界の人々の世の中への不安が高まっている時期でした。郵便事情も悪いところが多く、回答数の減少が懸念されましたが、最終的には1,876 件の回答が得られ(2021 年は1,893 件)、昨年とほぼ同数となりました。感染症や戦争などで大変な時期に、世界のほとんどの地域の人々がアンケートに参加してくださったことにお礼を申し上げるとともに、今年も御報告が出来ることを嬉しく思います。

今年は環境危機時計®の時刻(環境危機時刻)が9時35分になりました。2018年に9時47分で時刻が最も進み、2019年に9時46分、2020年に9時47分と3年連続で高い危機意識を示す結果となっていました。2021年には5分針が戻り、2022年にはさらに7分針が戻りました。昨年は世界的に多くの地域で時刻が戻りましたが、今年は太平洋に面したアジア、オセアニアでは時刻が戻り、北米、アフリカ、中東、東欧・旧ソ連では時刻が進むという二極化が見られました。この結果には現在の世界の地政学的な要因が影響しているようにも思えます。

また、2020年、2021 年と「日本人の環境危機意識調査」を実施しましたが、本年は「生活者の環境危機意識調査」として日本を含む世界25か国で実施しました。結果は弊財団のウェブサイトで公開いたしますので、世界の環境問題に関する有識者を対象とした本調査結果と比較してみてください。

多くの方からの回答とともに、有意義なご意見やコメントも多数頂きました。
今年も、各国の回答者のコメントは「アンケート自由記述検索」から閲覧できますので、環境問題に関する有識者の生の声をぜひご覧ください。


われわれは、本環境アンケートを通じて環境問題に関わる人のみならず、より多くの方々に環境への関心を持って頂くことにより、地球環境問題の解決に微力ながら貢献することを切に願っております。今後とも皆様方からの貴重なご助言・ご指導を賜りますよう何とぞよろしくお願い申し上げます。
2022年9月
公益財団法人 旭硝子財団

Ⅰ 調査の概要

調査時期2022年4月から6月
調査対象 世界各国の政府・自治体、NGO/NPO 、大学・研究機関、企業、マス・メディア、民間等の環境問題に関する有識者
(旭硝子財団保有データベースに基づく)
送付数25,770(海外 23,997 + 国内1,773)
回収数1,876
回収率7.3%
表1. 地域・組織別の回収結果

※本報告書における分析の百分率のベースは、特に説明がない限り、単一回答の設問については回収票数、複数回答の設問については有効回答の延回答件数を使用している。

※数値は小数点第1位もしくは第2位を四捨五入してある。

※延回答件数ベース:回収票数ではなく、その質問に対してなされた回答の延件数を基数とする。

Ⅱ. 調査結果の概要

Ⅱ-1 .人類存続の危機に関する認識̶環境危機時計®

  • 世界の環境危機時刻は2011年以来、進む傾向にあったが、2021年から2年連続で時計の針が戻って9 時35 分になった。2 年連続で針が戻ったのは12 年ぶりである。
  • 世界各地域の環境危機時刻を見ると、昨年に比べ太平洋に面したアジア、オセアニアでは10分以上針が戻ったが、北米、アフリカ、中東、東欧・旧ソ連で10分以上針が進むという二極化が見られた。
  • 日本の環境危機時刻は9 時33 分となり昨年に比べ針が3 分戻った。
  • 世界全体の環境危機時刻を決定する際に選ばれた「地球環境の変化を示す項目」は、選択率が高い順に、「気候変動( 32%)」、「生物圏保全性(生物多様性)(13%)」、「社会、経済と環境、政策、施策( 12%)」。
  • 世界全体の「地球環境の変化を示す項目」を環境危機時刻順に並べると、「社会、経済と環境、政策、施策」(9時49分)が最も進んでいる。従来「生物圏保全性(生物多様性)」の時刻が最も進んでいたが、今年は「社会、経済と環境、政策、施策」が昨年の9時34分から15 分進み、ロシアによるウクライナ侵攻の影響が出ていると推察される。

Ⅱ-2 .環境問題への取り組みの改善の兆しに関する認識 -パリ協定、SDGsが採択された2015年以前との比較

「一般の人々の意識」、「政策・法制度」、「社会基盤(資金・人材・技術・設備)」の三つの観点から環境問題への取組みに対する改善の兆しを探るため、2019年から、「脱炭素社会への転換」と「地球環境の変化を示す項目」の二つについて質問をしている。
  • 脱炭素社会への転換については、「政策・法制度」や「社会基盤(資金・人材・技術・設備)」の面は、「一般の人々の意識」の面ほど進んでいない。
  • 改善の兆しがある項目として、多く選ばれたのは、「気候変動」(30.0%)で、次に、「社会、経済と環境、政策、施策」(15.1%)「ライフスタイル(消費性向)」(14.5%)となった。「気候変動」の選択率は2年連続上昇している。「全く改善の兆しはない」という回答も14.6%あった。

Ⅱ-3 .持続可能な開発(SDGs)の達成可能性に関する認識

  • 世界で2030年に達成度が高いと思う目標として、昨年と同様に「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」、「13. 気候変動に具体的な対策を」が1,2位で、多くの国で選ばれている。
  • 世界で2030年に達成度が低いと思う目標として、「1. 貧困をなくそう」が最も多く選ばれ、これに「2 . 飢餓をゼロに」、「16. 平和と公正をすべての人に」が続き、これらの目標の実現は世界で多くの人が難しいと考えていることがわかる。
  • 自分の住む国・地域で2030 年に達成度が高いと思う目標として、世界平均としては、「2. 飢餓をゼロに」、「4. 質の高い教育をみんなに」、「6 .安全な水とトイレを世界中に」の三つが多く選ばれた。
  • 自分の住む国・地域で2030 年に達成度が低いと思う目標として、「1. 貧困をなくそう」、「10.人や国の不平等をなくそう」を選ぶ人が多かった。1と10の二つは、世界を見た時にも2030 年に達成度が低いと思う目標に選ばれており、世界的に共通の課題である。

Ⅲ. 調査結果

Ⅲ-1 人類存続の危機に関する認識- 環境危機時計®

結果を表示折りたたむ

問1 9 ページの表5は“地球環境の変化を示す項目”です。地球全体の問題を念頭に置きながら、あなたがお住まいの国または地域における環境問題を考える上で重要な項目を3つ選んで1位~ 3位の順位付けをし、それぞれ時計の針に例えて0:10 ~ 12:00の範囲で○○時○○分と答えてください。時刻は便宜上、10 分単位でご記入下さい。

※危機時刻の決定法について
 1位から3位の時刻の加重平均(1位:50%、2位:30%、3位:20%)として環境危機時刻を決定します。
 有効な回答が、1位と2位だけの場合は1位:62.5%、2位:37.5%。1位だけの場合は100%としています。

図1. 環境危機時刻

Ⅲ-1-1 世界の環境危機時刻

表2 環境危機時刻の推移(世界)

図2 世界と日本の環境危機時刻の推移
  • 世界の環境危機時刻は2011年以来、進む傾向にあったが、2021年から2年連続で時計の針が戻った。

図3-1 世界各地域の環境危機時刻

表3 世界各地域の環境危機時刻の推移
  • 世界の環境危機時計®の平均時刻(環境危機時刻)は9 時35 分となり昨年より7 分戻った。
  • 中国の環境危機時計®の平均時刻(環境危機時刻)は9 時29 分となり昨年より38 分、大幅に戻った。
  • 日本の環境危機時計® の平均時刻(環境危機時刻)は9 時33 分となり昨年より3 分戻った。

図3-2に表3に示した地域・国の中から回答者の多いものを抜粋して、過去10年の環境危機時刻の推移を示す。


図3-2 回答者の多い国・地域の環境危機時刻の推移
  • 表3と図3-2に示すように、地域別に見ると、アジアで昨年より15 分戻っているが、これは中国で38 分戻った影響が大きい。中国の2021年〜2025年の第14次5カ年計画では、拘束性項目(規画の目標のうち必達すべき項目)として主要汚染物質の排出総量の削減目標を定めるなど、炭素排出削減も含めた環境規制を強化する方向を示している。表3に示すように中国は回答者数が多く、その回答者の9割近くを占める20代、30代の人々は、政府の環境対策を評価し、中国での環境問題は良い方向に向かっていると考えているようである。
  • 世界各地域の環境危機時刻を見ると、昨年に比べ北米、アフリカ、中東、東欧・旧ソ連で10分以上針が進んだ。
  • 昨年、北米の環境危機時刻は、30 分戻って10 時3 分となったが、今年は14 分進んだ。

回答者の年齢層による環境危機時刻の過去10年の推移(2013年~2022年)


過去10年間の環境危機時刻の世代別推移を表4,図4に示す。
表4. 環境危機時刻の世代別推移
  • 60 代以上の回答者は、他の世代よりも進んだ環境危機時刻を回答する傾向がある。
  • 今年は60 代のみ環境危機時刻が進み、20 ~ 50 代では前年より時計の針が戻った。
  • 20 代、30 代の環境危機時刻は、2013 年の9 時01 分から上昇傾向にあり、2018 年には中国の20 代、30 代の回答者の危機意識が高くなった影響を受け10 時00 分となったが、今年は環境危機時刻が昨年より16 分、大きく戻った。

図4. 環境危機時刻の世代別推移

Ⅲ-1-2. 地球環境の変化を示す項目

表5. 地球環境の変化を示す項目

図5 持続可能な開発目標 (SDGs)

Ⅲ-1-2-1  地球環境の変化を示す項目(第1 ~ 3位選択)の分布

図6-1 地球環境の変化を示す項目(第1 ~ 3位選択)の分布 (環境危機時刻と選択率), 2022年
  • 世界全体の環境危機時刻を決定する際に選ばれた「地球環境の変化を示す項目」は、昨年と同様に「気候変動」(32%)、「生物圏保全性(生物多様性)」(13%)、「社会、経済と環境、政策、施策」(12%)が上位3項目であり、これに「水資源」(9%)「生物化学フロー(環境汚染)」(8%)、「ライフスタイル(消費性向)」(7%)、「人口」(7%)、「陸域系の変化(土地利用)」(6%)、「食糧」(6%)と続いた。各項目の占める割合は昨年からほとんど変わっていない。
  • 同じく世界全体の「地球環境の変化を示す項目」を環境危機時刻順に並べると、「社会、経済と環境、政策、施策」(9 時49 分)、「生物圏保全性(生物多様性)」(9 時43 分)、「気候変動」(9 時40 分)、「ライフスタイル」(9時38分)が世界平均(9時35分)よりも進んでおり、これらに続いて、「人口」(9時35分)、「生物化学フロー(環境汚染)」(9 時26 分)、「水資源」(9 時21 分)、「陸域系の変化(土地利用)」(9 時11 分)、「食糧」(9 時07 分)の順となった。
  • 特徴的なのは、これまで「生物圏保全性(生物多様性)」の時刻が最も進んでいたが、今年は「社会、経済と環境、政策、施策」が昨年の9 時34 分から15 分進んで9 時49 分と最も危機意識が高い項目になっていることで、ロシアによるウクライナ侵攻の影響が出ていると推察される。
図6-2 地球環境の変化を示す項目(第1 ~ 3位選択)の分布 (環境危機時刻と選択率), 2021年

図6-3 地球環境の変化を示す項目(第1 ~ 3位選択)の分布 (環境危機時刻と選択率), 2020年

Ⅲ-1-2-2 環境危機時刻/選択率の分布の年次変化

図7 環境危機時刻/選択率の分布の年次変化 (2013年~2022年度)
  • 過去10年間を見ると、「気候変動」は選択率が増加し、環境危機時刻は進む傾向にある。それ以外の項目は、選択率の変動はあまり大きくなく、環境危機時刻は9 時から10 時ごろの間を変動している。

Ⅲ-1-2-3 各地域の地球環境の変化を示す項目の選択傾向

表6 各地域の地球環境の変化を示す項目の選択傾向
  • 世界全体で最も多く選ばれた「地球環境の変化を示す項目」は、昨年と同じ 「気候変動」(32%)で、次いで、「生物圏保全性(生物多様性)」(13%)で、これは多くの地域で見られる傾向である。
  • アジアに着目すると、「気候変動」の次の項目はインドでは「人口」、中国では「水資源」、台湾では「生物化学フロー(環境汚染)」、韓国では「生物圏保全性(生物多様性)」、日本では、「社会、経済と環境、政策、施策」が選ばれ、同じアジアの中でも違いが見られる。
  • 昨年「気候変動」は選択率第3位であった南米でも、今年は「気候変動」が選択率第1位となった。
  • 世界のほとんどの地域で、「気候変動」が選択率第1位であるが、東欧・旧ソ連では昨年第2 位だった「社会、経済と環境、政策、施策」が選択率第1 位となっている。

Ⅲ-1-2-4 地球環境の変化を示す項目の環境危機時刻の地域分布

表7 地球環境の変化を示す項目の環境危機時刻の地域分布
  • 世界の環境危機時刻は9時35分であるが、「生物圏保全性(生物多様性)」(9時43分)、「社会、経済と環境、政策、施策」(9時49分)が最も進んでいる2項目である。「生物化学フロー(環境汚染)」は、昨年9時53分であったが、今年は9時26分と27分戻った。
  • 地域ごとに見て危機意識が高いのは、オセアニアの「人口」(10時50分)、北米の「社会、経済と環境、政策、施策」(10時42分)、東欧・旧ソ連の「ライフスタイル」(11時16分)である。
  • 東欧・旧ソ連では、昨年と比べて他の項目での時刻のプラスの変化は15分以内であるが、「ライフスタイル」は9時14分から2時間2分も進んだ。

Ⅲ-2 環境問題への取り組みの改善の兆しに関する認識

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環境問題への取組みに改善の兆しは見られますか。パリ協定、SDGsが採択された2015年以前と比較して以下の3つの観点からお答えください。

 環境問題への取組みに対する改善の兆しとして、「一般の人々の意識」、「政策・法制度」、社会基盤「資金・人材・技術・設備」の三つの要素があると仮定し、脱炭素社会への転換と「地球環境の変化を示す項目」別に質問をした。
 回答の「全く進んでいない」を-2、「どちらかといえば進んでいない」を-1、「どちらともいえない」を0、「どちらかといえば進んでいる」を+1、「確実に進んでいる」を+2として数値化し平均値を算出した。
 地域・国ごとの平均値の算出にあたっては、30 以上の標本数を対象にした。

問2-1 脱炭素社会への転換は進んでいると思いますか?

 全世界の平均値と地域・国ごとの平均値を表8に示す。

世界平均は下記の通りとなった。
  • 一般の人々の意識+0.81
  • 政策、法制度+0.47
  • 資金・人材・技術・設備+0.43

  • 全体として、脱炭素社会への転換については、「政策・法制度」や「社会基盤(資金・人材・技術・設備)」の面は、「一般の人々の意識」ほど進んでいないという結果となった。
  • 表8から、2021年に比べ2022 年はどの項目でもポイントが低下した国、地域が多いが、日本と韓国のみ3 年連続してポイントが増えて脱炭素社会への転換が進んでいるとの意識が強まっている。
  • 地域により「一般の人々の意識」と「政策、法制度」の進み具合のとらえ方に差が見られた。中国、台湾では両者の差は小さく、「政策、法制度」が「一般の人々の意識」よりやや進んでいるという結果であった。これに対し、オセアニア、北米、西欧では両者の差が大きく、「政策、法制度」が「一般の人々の意識」よりも大きく遅れているという結果となっている。上記の傾向はここ3 年間変わっていない。
  • 中国では3年連続で、「政策・法制度」、「社会基盤(資金・人材・技術・設備)」の面で脱炭素社会への転換が進んでいるとの意識が強い。中国の2021 年〜2025 年の第14 次5カ年計画が国内で評価されていることの現れであろう。
  • 韓国では昨年まで3年連続で、回答はすべての要素においてマイナスの「進んでいない」という結果であったが、今年は「一般の人々の意識」、「政策・法制度」で初めてプラスの値となった。
  • 東欧・旧ソ連では、2020年から2022年にかけて、「社会基盤(資金・人材・技術・設備)」の面で3年続けてポイントが低下した。
  • 組織別に見ると、企業関係者に「政策・法制度」、「社会基盤(資金・人材・技術・設備)」の面で脱炭素社会への転換が進んでいるとの考えが強い。
  • 世代別に見ると、20 代、30 代の若い世代は、他の世代に比べて「政策、法制度」、「社会基盤(資金・人材・技術・設備)」の面で脱炭素社会への転換が進んでいるとの考えが強い。
表8 「脱炭素社会への転換の進み具合」に関する世界平均と地域、属性別平均

問2-2 取組みに改善の兆しが見られることを、7ページ、表2の“地球環境の変化を示す項目”から1つ選んでお答えください。


表9 改善の兆しがあると選択された項目の選択率と改善の兆しの指標値の推移
  • 改善の兆しがある項目として、2022年に多く選ばれたのは、「気候変動」(30.0%)で、この選択率は増えており、次いで、「社会、経済と環境、政策、施策」(15.1%)、「ライフスタイル(消費性向)」(14.5%)の順であった。この傾向は2019年以来変わっていない。「全く改善の兆しはない」という回答は14.6%あった。問2-1と同様に数値化し、結果を表9に示す。
  • 「 気候変動」は、問1で、環境問題を考える上で重要な項目として最も多く選ばれており、「気候変動」の問題と、その改善への取り組みについては世界的に関心が高いことがうかがわれる。
  • 問1で2番目に多く選ばれ、項目の中で環境危機時刻が最も進んでいる「生物圏保全性(生物多様性)」は、取り組みに改善の兆しが見られる項目としては4番目の選択率になっている。「生物圏保全性(生物多様性)」については、「一般の人々の意識」「政策・法制度」、「社会基盤(資金・人材・技術・設備)」すべての面で昨年よりポイントが向上している。
一番多く選ばれた「気候変動」について、全回答の平均値と、標本数が15以上の地域・組織・世代ごとの平均値を表10に示す。

表10 改善の兆し「気候変動」に関する 世界平均と地域、属性別平均
  • 「 一般の人々の意識」の2022年世界平均は+1.28となり、 2020年と同じレベルに戻った。昨年に引き続き、 2022年にも、オセアニア、北米、西欧では、+1.5以上の高い値になっている。
  • 「 政策・法制度」の2022年世界平均は+0.75であるが、中国は+1.20と、他の地域よりも圧倒的に大きくなっている。
  • 「 社会基盤(資金・人材・技術・設備)」の2022年世界平均は+0.71で、地域別では、中国、北米、西欧はこれより高めで、オセアニア、メキシコ・中米・カリブ諸国、南米、アフリカは低い傾向にある。
  • 2020年から2022年にかけて、カナダでは「政策、法制度」で、3年連続で改善の兆しが見られた。

※ 気候変動以外の項目については、国、地域ごとの標本数が少ないため、データ分析は行わなかった。

Ⅲ-3 持続可能な開発(SDGs)の達成可能性に関する認識

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持続可能な開発目標 (SDGs)の達成可能性に関して、世界平均で見たときと、自分が住む国・地域で見たときに、17ある目標の中で2030年に達成度が高いと思う目標、低いと思う目標を3つずつ選び、それぞれ高いもの、低いものから順に1位、2位、3位を選んでもらった。回答は1~3位の百分率の積上げで解析し、各項目を比較した結果を表11~14に示す。
表11 世界で2030年に達成度が高いと思う目標(1位~ 3位の積上げ、複数回答)
  • 世界で2030年に達成度が高いと思う目標として、「9 .産業と技術革新の基盤をつくろう」、「13.気候変動に具体的な対策を」が1,2位で、多くの国で選ばれており、「7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに」が3位となっている。
  • 「 17.パートナーシップで目標を達成しよう」は、アジアではあまり選ばれていないが、その他の地域では多く選ばれている。
  • 「 3 .すべての人に健康と福祉を「」4.質の高い教育をみんなに」は、韓国やアジアの開発途上国で多く選ばれている。

表12 世界で2030年に達成度が低いと思う目標
  • 世界で2030年に達成度が低いと思う目標として、「1.貧困をなくそう」が最も多く選ばれ、これに「2.飢餓をゼロに」、「16.平和と公正をすべての人に」が続き、これらの目標の実現は世界で多くの人が難しいと考えていることがわかる。
  • 日本、韓国、米国、西欧、アフリカ、中東、東欧・旧ソ連では、「16.平和と公正をすべての人に」の達成が難しいと考えている人が多い。
  • 世界で2030年に達成度が低いと思う目標は、達成度が高いと思う目標に比べて、地域によるばらつきが小さく、人類共通の難題が凝縮されている。

表13 お住まいの国・地域で2030年に達成度が高いと思う目標
  • 自分の住む国・地域で2030年に達成度が高いと思う目標として、世界平均としては、「2 .飢餓をゼロに」、「4 .質の高い教育をみんなに」、「6 .安全な水とトイレを世界中に」の3つが選ばれている国・地域が多い。
  • 2021年にはアジアの主要国で「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」が選ばれたが、2022年にはこれに代わり、「2.飢餓をゼロに」を選んだ国が増えた。
  • 「13.気候変動に具体的な対策を」は、世界で2030年に達成度が高いと思う目標として、ほとんどの国で選ばれているが、自国でこの目標の達成度が高いと考える人は限られている。
  • 「4.質の高い教育をみんなに」は、世界で2030年に達成度が高いと思う目標として、上位に選ばれていないが、自国でこの目標の達成度が高いと考える国が多い。
  • 「 17.パートナーシップで目標を達成しよう」は、世界で2030年に達成度が高いと思う目標としてアジア以外で多く選ばれているが、自国でこの目標の達成度が高いと考える国は少ない。

表14 お住まいの国・地域で2030年に達成度が低いと思う目標
  • 自分の住む国・地域で2030年に達成度が低いと思う目標として、「1 .貧困をなくそう」、「10.人や国の不平等をなくそう」、「13.気候変動に具体的な対策を」の3つを選ぶ人が多かった。1と10の2つは、世界を見た時にも2030年に達成度が低いと思う目標に選ばれており、世界的に共通の課題である。
  • 「 2.飢餓をゼロに」は世界のほとんどの国で、世界で2030年に達成度が低いと思う目標に選ばれているが、自国について、「2.飢餓をゼロに」を選んだのは、インド、メキシコ・中米・カリブ諸国、アフリカで、これらの地域では「2.飢餓をゼロに」が大きな課題であることがわかる。
  • 「 5.ジェンダー平等を実現しよう」の自国での実現が難しいと考えている人が、世界の中でもアジアの日本、中国、韓国に多い。
  • 「 12.つくる責任つかう責任」、「13.気候変動に具体的な対策を」の2項目は、自国では世界で2030年に達成度が低いと思う目標に選ぶ国が多いが、世界を見た時には、「1.貧困をなくそう」、「2.飢餓をゼロに」、「16.平和と公正をすべての人に」のほうが、達成度は低いと考えられている。

Ⅳ. おわりに

 昨年の環境危機時計®の時刻は9時42分と2020年の時刻から5分戻り、2022年の時刻は9時35分と更に7分戻った。これは中国で38分戻った影響が大きい。中国は回答者数が多く、その回答者の9割近くが20代、30代であり、中国の若い世代が、中国政府の環境対策を高く評価し、環境問題は良い方向に向かっていると考える人が多いようである。

 また、環境危機時刻を決める際に選択する「地球環境の変化を示す項目」では、「気候変動」が他の項目に比べ圧倒的に多い32%の人々に選ばれ、2013年以来、選択率が増加傾向にあることからも、気候変動が喫緊の問題と認識されていることがわかる。

 昨年に引き続き、パリ協定、SDGsが採択された2015年以前と比較して改善の兆しが見られるかという意識調査も行った。「政策、法制度」や「社会基盤(資金・人材・技術・設備)」は国や地域ごとに状況が異なっているので、全世界の平均値と地域・国ごとの平均値を合わせて表にまとめ、2020年からの推移がわかるようにした。

 問2-1の脱炭素社会への転換については、世界全体では「一般の人々の意識」には向上が見られたが、「政策、法制度」、「社会基盤」においては昨年よりやや低いレベルとなった。

 問2-2で、取組みに改善の兆しが見られる上位項目は、「気候変動」(30.0%)、「社会、経済と環境、政策、施策」(15.1%)、「ライフスタイル(消費性向)」(14.5%)の順であった。「気候変動」を選ぶ割合は過去3年で最も高く、「気候変動」の問題と、その改善への取り組みについては一般の人々の意識も高い。

 2030年までに達成すべき課題であるSDGsについて、昨年に引き続き今年もその達成度に関して質問した。達成度が高いと思う目標は地域によって比較的ばらつきがあるが、達成度が低いと思う目標としては、ほとんどの国で「1.貧困をなくそう」と「2.飢餓をゼロに」の二つが選ばれ、3位の項目として2021年は「人や国の不平等をなくそう」であったが、今年は「16.平和と公正をすべての人に」が選ばれ、まさに今戦争が行われている状況が反映されている。

 今後、しばらくの間、上記の質問を続けて、全世界の平均値と地域・国ごとのばらつきに注目して調査を続けていく予定である。

 最後に、今年もアンケート回答期間直前の一年間の、環境に関する世界の主な出来事をまとめた表を参考資料として作成した。報告書の結果を自分なりに読み解く際に、この表を参考にしていただければ幸いである。
番号 項目 あなたがお住まいの国または地域で観察されること(例) プラネタリー・
バウンダリーズ(PB)
関連するSDGs(持続可能な開発目標)
1 気候変動 大気中CO2濃度や地球温暖化、海洋酸性度の増加
旱ばつ、大雨・洪水、暴風雨、大雪、異常低温・高温、河川・湖沼の干上がり、砂漠化などの悪化(増加、頻発化、巨大化)
気候変動、
海洋の酸性化、
大気煙霧質、
オゾン減少
2 生物圏保全性(生物多様性) 絶滅する生物種(見かけなくなった生物)の増加、(汚染、気候変動、土地利用等も関連) 遺伝子多様性、
機能性の多様性
3 陸域系の変化(土地利用) 特に熱帯、温帯、亜寒帯の生物圏の森林領域面積の変化
耕作域面積の変化
陸域系の変化
4 生物化学フロー(環境汚染) 過剰な窒素やリン分による富栄養化や化学物質やマイクロプラスチックスなどによる河川・海洋・土壌汚染の増加
浮遊物質や煤、化学物質による大気汚染の増加
化学物質による汚染、
窒素とリンの循環
5 水資源 枯渇や汚染による利用可能な淡水の減少
グリーンウォーター(土壌に含まれる植物が利用する水)の管理や質の低下
淡水
6 人口 地域や国全体の人口増加
国全体の人口増減とは無関係な都市人口の増加
ほぼ全てのPBの領域に関連
7 食糧 陸や海の食糧資源の減少 ほぼ全てのPBの領域に関連
8 ライフスタイル(消費性向) エネルギー・資源多消費型ライフスタイルからの転換 ほぼ全てのPBの領域に関連
9 社会、経済と環境、政策、施策 環境経済、環境会計を柱とするグリーンエコノミーの実現
環境問題に対する認識や環境教育の進展、法制度、社会基盤
貧困問題の解決、ガバナンス、女性の社会的地位
ほぼ全てのPBの領域に関連
プラネタリー・バウンダリーズ:Will Steffen, Katherine Richardson, Johan Rockstrom et.al. Science 13 Feb 2015 vol. 347, issue 6223

回答者からのご意見

アンケート自由記述検索

2022年 アンケート自由記述ご意見

注)以下に掲載の記述回答文の内容は、回答者個人のご意見で有り、財団の見解を代表するものではありません。
また回答には氏名(敬称略)、国名、事務局番号を明記して、匿名希望者は匿名として表記しております。
表中のご意見は、一部抜粋となっているものもあります。

2022年 SDGsに関するご意見

注)以下に掲載の記述回答文の内容は、回答者個人のご意見で有り、財団の見解を代表するものではありません。
また回答には氏名(敬称略)、国名、事務局番号を明記して、匿名希望者は匿名として表記しております。
表中のご意見は、一部抜粋となっているものもあります。

2022年 地球環境の変化を示す項目(第1 ~ 3位選択)の分布(項目ごとの危機時刻と支持率)

2022年 環境問題への取り組みの改善の兆しに関する認識